川崎のDNA
Bリーグの歴史は短いけれども、日本のバスケットボールの歴史は長い。
「川崎ブレイブサンダース」は発足3年目、いまの経営陣になってからは1年目だが、
新ロゴにSINCE 1950とあるように、東芝の実業団時代も含めると、実に70年近い歴史を誇る。しかし、その70年のうちの多くが、日の目を浴びない時間を過ごしてきた。
NPBのベイスターズを、お荷物球団と呼ばれていた時代から一躍チケットをプレミア化させた経験を持つDeNAがチームを経営することになり、「川崎は良くなる、人気チームになる」と囁かれるようになった。確かに、今シーズンの集客数の平均は4035.5人(2018/12/9時点)であり、4000人越えは現在千葉に次ぐ2位。
栃木、琉球などを抜き去り、全体的に3シーズン目で縮小傾向の動員に対して、1チームのみ大幅に動員を増やし、輝きを見せている。
私は、ようやくその川崎を見ることにした。
とどろきアリーナは何度か行ったことがあった。NBL時代も行ったことがあったし、Bリーグになってからも何度か訪れた。
見るたびに「良くなっては来ているな」とは思いつつも、ほかのクラブを訪れたときと比べて、「チームは強いけど、演出やパフォーマンスがいまいち」という印象は拭えないでいた。
Bリーグになってからこそ、様々な催しを試みていたが、なかなか劇的な変化という意味では乏しかった。いまいち演出に一貫性が感じられず、ぽつんぽつんと断片的になにかを取り入れていったといった印象だった。
しかし、今日見た川崎は違った。まず、とどろきアリーナ前の広場が違った。
「何かやってるぞ」と見せるようなえんじ色のテントが張られ、
マスコット、ロウルのふわふわ(正式名称、、、)があり、バスケットをしているコーナーがある。
「あ、何かやっている」「バスケットか」
会場周辺を通り過ぎる一般の人に、この会話をさせられる。
グルメも充実しており(何も食べなかったけど)、試合前もきっと飽きることはないだろう。
そして、一番感激したのは、エントランスだった。
若干暗くして、闇を基調にチームカラーのえんじ色のライトが光を放つ。
クールな雰囲気に、非日常を感じさせる。
どの会場もそうだが、今のBリーグは「脱体育館」をしきれていない。
普段市民が使う「体育館」を抜き出しきれない。
各会場、コート周りや本当に「体育館」のホールを装飾してなんとか「体育館」感を消そうとしているが、エントランスを暗くしてまでそこに凝るのは、初めての体験だった。(他にそういうところあったらごめんなさい)
とどろきアリーナは、「エンターテインメントアリーナ」に大きく変わろうとしていた。まだ完成形ではないのだろうが、そんなポテンシャルを感じた。
「やりたいこと」「できること」は異なる。
B1は18クラブあり、それぞれに青写真があるのだろう。
しかし、おそらく「やりたいこと」と「できること」の乖離が大きいクラブばかりだろう。
その原因は、大体「お金がない」「人がいない」「設備がない」の3つに集約される。
だが、DeNAという「お金」が入り、経験を持った「人」が入った。設備はまだ満足とは言えないが、おそらく川崎は理想のアリーナを築き上げるだろう。
理想のアリーナが完成した時、川崎は、Bリーグの中でも一つ抜きんでた存在になれるのではないか。
そんなパワーを感じた。今シーズンの川崎初観戦だった。